TOP > Novel > 青春・友情 > しらゆきひめ。のたいやき屋 > 設定 > プロット
調理師の専門学校で、お店をやる実習。授業内でやる校内店舗実習とは別口。計画・調理・会計・販売などを全部自分たちでやる。
準備2週間、開店1か月間、土日や平日夜。クラスは調理師、パティシエ、カフェなどあるけれど、この実習は合同、希望者から抽選。参加費は2万円。グループ分けはランダム。
飲食店、お菓子屋、パン屋、屋台系(?)の店舗があって、どのグループがどの店舗を使うかはくじ引き。一番人気は飲食店、一番不人気は屋台系。グループは屋台系を引いてしまう。
「どの店舗も応援してくださる方のご厚意で成り立ってます。機材も賃料も格安で提供してもらってます」とか、店舗経営の授業担当の先生が言う。固定費とかは計算しなくていい、店舗によって立地や材料費とかが変わるので売り上げは競わないとかの説明。
なにをやるかを相談して、たいやき屋に決まる。あてられたお店の場所でできるものを挙げていって、今までの先輩たちがやっていなかったもの、嫌いな人があまりいないという基準で決定。
次にお店の名前。専門学校の名前をもじったり、たいやきのイメージから出したりとかする案が出る中で、1人がそこにいるメンバー7人の名前を書き出す。椎名、楽市、湯浅、北村、樋口、目黒、丸山。頭文字を取っていくと「しらゆきひめ」になる。それにしよう!と騒ぐけれど、丸山だけが浮いてしまう。じゃあ「しらゆきひめ。」に、ということでお店名がそれに決まる。
打ち合わせ中に先輩が来て、オープン日にメンバー全員で店の前で写真を撮れ、と言ってくる。
開店準備の打ち合わせをする。
出店場所はその実習で代々使われてきた場所。商店街の人たちも、いつも専門学校生がそこでお店を出しているので親切にしてくれる。たいやきの生地は業務用のものを使用だけれども、できるだけその地域でとれたものなどを使用。商店街は地産池消に熱心で、そのスーパーの一角にある地域の農産物コーナーが繁盛していて、地域の人たちの憩いの場も兼ねていた。先輩からのアドバイスでそこに顔を出すようにする。
農家の人たちの間では、スーパーの商品として出しているにもかかわらず、物々交換とかが盛ん。たいやきの試食もかねて持っていき、感想を聞こうとしたら、感想以外にも野菜であったり果物であったり肉であったりをくれる。先生にもらってもいいのか、もらったものを材料として使っていいのかと聞いたら、それはそれで記録をしっかりとしておけばいいと言われて使うことにする。
コミュニケーション能力が高い2・3人がスーパーの農産物コーナーの担当になる。
物々交換会で酪農家のおばちゃんが牛乳をくれる。その場で飲んだメンバーがおいしさに感動する。おばちゃんが言うには、自分も旦那も60間際。息子はサラリーマンで家庭も持った。跡継ぎはいないけれど、できるだけ続けていきたい、と話す。農産物コーナーのおばちゃん達がみんな同じような状況だと言いだす。専門学校生たちが跡継ぎになってくれたらねーと言われて学生が慌てる。
閉店後の掃除をしていると、歴代の先輩たちが店での写真を張っていたアルバムをメンバーが見つける。写っている一番最初は商品の写真、店の内装、そこからお客さんの写真、お客さんときっと先輩。写っているお客さんの中には、今の常連さんの姿もある。店の前で大勢のお客さんと先輩たちの写真。次のページに違う先輩たちが店の前で集合写真。内装、商品、お客様第一号らしいお客さんと先輩の写真。その人たちの写真はお客さんたちとの店の前での集合写真で終わっている。そういうのが6代ぐらい。一番新しいページに自分たちの写真を貼る。
実習の課題として、オリジナル商品を出店期間中に作るというものがある。農産物コーナーで買えるもの・もらったもので作れるたいやきの具材を考える。つぶあん・カスタード(牛乳)・お好み焼き(キャベツ他)など。店名にまつわるものがいいと意見が一致。白いもの、雪、りんごなど。かき氷の意見も出たけれど却下。ミルクたいやきとりんごたいやきの試作を開始する。
たいやき屋の看板に凝ったり、たいやきの包装紙袋を凝ったり、サービスで具を多めに入れてしまったり、経費が上がってしまったりに苦戦する。言い争いに発展したりも。お店の中での役割分担が自然と決まっていく。
採算度外視でいろいろと進めていくメンバーと、売り上げは問われない実習でも堅実的にやっていきたいメンバーで対立が起きる。堅実派が先生に相談しにいくと、どっちでもいいんじゃないかなぁと言われる。
スーパーの店長から大判焼きを作ってみたから試食してほしいと言われる。食べてみるとたいやき屋で出しているものとほとんど同じ味。評判がいいから真似てみたとケロっと言う店長。君たちの実習が終わってから出すから安心して、とまで言われる。店長も専門学校の卒業生。スーパーで名物のからあげとドーナツ卒業生のレシピだとわかる。からあげは当時専門学校生だった先生と店長が、今たいやき屋をやっている場所で仲間たちと唐揚げ屋をやっていた頃のものだとスーパーの店長に言われる。
先生が店に様子を見に来た時にそれの話をすると、「自分たちで店を持ってみたかった」とか、「採算がどうのとかはこれから嫌ってほどやるんだ。周りが甘やかしてくれるうちに好き勝手してればいいんだよ」と話をしてくれる。「やる前の学生たちには人気ないけど、実際に一番評判いいのはここだぞ。お客さんにも生徒にも」一番地域住民と交流できる店舗はここだということ。
常連さんがだんだんとできてくる、学生たちもわかってくる。その中で、土日昼間のだいたい同じ時間につぶあんとカスタードを1個ずつ買っていく強面の60歳ぐらいの男性がいる。注文以外には喋らないので、学生内でどんな仕事をしているのか予想して遊んでいた。
ある土曜日に開店したが、60歳ぐらいの男性が時間になっても来なかった。
午後に農産物コーナーのおばちゃんの一人が、酪農家のおばちゃんが脳梗塞で倒れて亡くなったと飛び込んでくる。通夜は今日やる、と聞いて慌てるメンバー。通夜に行こうとするメンバーに、おばちゃんと一番仲が良かったはずの農産物コーナー担当が自分は行かない、リーダー、サブリーダーが行ってきてくれ、と言い出す。
リーダーとサブリーダーが通夜に行くと、喪主が土日常連の男性だった。いつもの強面。
通夜に行かなかった会計係りが会計簿に冠婚葬祭費の勘定を付ける。その後に商品試作をしているメンバーに混じる。
次の土曜日、午前中に農産物コーナーに行くといつものおばちゃん達にまじって、酪農家の旦那さんがいた。農産物コーナー担当は通夜も葬式も行っていなかったのでおくやみの言葉を伝えると、旦那さんが妻は君たちの作るたいやきが好きだったと話す。泣き出す学生の女の子、おばちゃんたち。学生のもう1人がたいやきの入った袋を旦那さんに差し出す。袋には「つぶ」「カスタード」のシールと、手書きで「ミルク」「ミルク」。旦那さんが「妻も喜ぶだろう、仏壇に置いておく。跡継ぎもいないしもう年。妻も亡くなった。仕事をやめようと思ったけれど、できる限りうちはまだ酪農を続けようと思う」と呟く。泣いているおばちゃんたちに、別に分けておいたミルクたいやきを配っていく。
最終日に沢山のお客さんが来てくれる。写真をみんなで撮りたいから、食べてもいいけど、待っててくれないかとお客さんたちに言うと、もちろんそのつもりで来た、とかみんな言う。服装とか化粧とかがいつもよりバッチリなおばちゃんもいたり。
酪農家の旦那さんが奥さんの遺影を持ってくる。
閉店の時間になってもお客さんがとぎれなくて作りつつの出しつつの。材料がなくなってごめんなさい。
で、写真。メンバーのデジカメで撮ろうとしたら、商店街のカメラ屋さんが出てきて、三脚とかの用意バッチリ。タイマーで集合写真を撮ってくれる。